夜は副交感神経を優位にして、スムーズに睡眠に向かうための時間を。〜ヨガ講師・磯沙緒里さんのナイトルーティン〜

自分自身のお手入れはもちろん、家族やまわりにいる人たちへのケアも大切にする。そんなコンディションを整えることに長けたプロフェッショナルたちは、一日の疲れや乱れをオフするためにどんな夜のルーティンを取り入れているのでしょうか。今回は、ヨガ講師として活躍する、磯沙緒里さんにお話を伺いました。

1日のはじまりはヨガから。寝ている体を目覚めさせる

やわらかな光が差し込むリビングルームには、たくさんの観葉植物が窓辺に置かれ、大きな本棚にはお気に入りの書籍が並べられています。ここはヨガ講師であり、イベントプロデューサーとしても活躍する磯さんのご自宅兼仕事場。アロマの香りに包まれたこの空間で、仕事でもプライベートでも、ヨガを楽しんでいます。

磯さんは、ご主人と6歳になる息子さんとの3人家族。ウィークデイは、6時ぐらいに起床して、お子さんが起きてくるまでの30分〜1時間ほどは、ヨガで体を目覚めさせ、自分の体と向き合う時間を作っています。

午前中はプライベートレッスンがあったり、仕事の打ち合わせが入ったりと、どちらかというと外とのつながりをもつ仕事がメイン。そしてお昼休憩を取ったら、午後は自分だけの作業に集中することも多いそう。記事の執筆をしたり、イベントのアイデアを練ったり、ヨガインストラクターを養成するためのテキストを作ったり…。すべての仕事を17時までには終わらせて、そこからは家族と自分自身の時間に切り替えています。

「息子を保育園にお迎えに行って、その帰りに夕食の買い出しをします。帰宅後すぐに夕食を作り、なんなら、作りながら食べてしまうぐらいにバタバタです(笑)。その後に一緒にお風呂に入って、20時には息子が寝てしまうので、それから自分だけの夜時間がはじまります」

夜は21時から1時間ほど、オンラインのヨガレッスンが入っている日も。『安眠ヨガ』というレッスンで、眠りに向かうためのヨガを行うため、パジャマのまま、もちろん画面オフでもOK。磯さんの穏やかな声も相まって、参加者のみなさんも自然と睡眠に誘われるようです。画面越しに、みなさんとリラックスした夜時間を共有しています。

早朝に行う自分のためのヨガからはじまり、昼はプライベートレッスンやイベントなどで対面でのレッスン、そして昼夜問わずに行うオンラインレッスン…。1日のうちに仕事でもプライベートでも、何度もヨガをする磯さんのライフスタイルは、オンとオフの切り替えが難しそうに見えますが、どのように切り替えをしているのでしょうか。

「夜の時間で私が大切にしていることは、日中は優位になっている交感神経を、睡眠に向かって副交感神経が優位になるように切り替えていくこと。いわゆる、“興奮”と“鎮静”の切り替えですね。私が行っている夜のルーティンのほとんどは、意識的に自分自身を興奮させず、睡眠に向かって鎮静していくためのものなんです」

そこで、磯さんの夜のルーティンを教えてもらいました。

夜のルーティン その1

手作りのお掃除スプレーで室内をリセット

部屋の片付けは朝には行わず、息子さんが眠りについてから夜に一度だけ行います。散らかっているものを片付けて、出ているものが何もない状態にします。これで、部屋も気持ちもリセットできるのだそう。

キッチンまわりなど掃除の仕上げには、手作りのお掃除スプレーを愛用しています。エタノールと水を混ぜて、そこにアロマオイルを加えるのが定番のレシピ。ユーカリやゼラニウム、ティーツリーなど、すっきりとした香りと殺菌作用のあるものをブレンドして使っているそうです。

「これはもともと、ヨガマットのお掃除にいいと聞いて作りはじめたんです。ヨガマットは洗いにくいうえに、顔をつけたり近づけて使うことが多いので、ニオイが気になりますよね。この手作りのお掃除スプレーを使うと、清潔で気持ちよくヨガが楽しめるんです。

このお掃除スプレーは、掃除と除菌が同時にできて、さらに掃除をしながら香りが楽しめるところが気に入りました。それで、今では家のあちこちのお掃除に活用しています」

夜のルーティン その2

30分以内のバスタイムで、睡眠のために体温を上げる

お子さんと一緒に入浴すると、疲れを取る間もなくバタバタと出てしまうので、眠る前にもう一度、1人だけでお風呂に入るという磯さん。汗っかきということや、長湯は体に負担がかかることもあって、眠る前のお風呂は30分以内に。湯船には毎日、その日の気分で選んだ入浴剤を入れるのも日課です。

「すごく疲れていたり、しっかり汗をかきたいときはエプソムソルトを選びます。逆に、今日はリラックスして入りたいというときには、香りがお気に入りのバスソルトにしたりと、体の状態や気分によって使い分けています。」

入浴した直後は、体が火照っていて眠れないので、ヨガで体をほぐしながらクールダウンさせます。体温が少し下がってきたのを感じたタイミングで寝室に入るようにすると、スムーズに睡眠に入ることができるんです。夜はとくに、体温の上げ方や下げ方にも気をつけていますね」

さらに、夜の飲み物にも気をつけています。夜は眠りのためにカフェインを取らないようにしているそうで、ハーブティーやノンカフェインのお茶などを積極的に飲んでいます。気に入ったものを何種類も購入しておいて、そのときの気分に合わせてお茶を選び、それをゆっくり丁寧に淹れるのも、磯さんにとっては大事な時間です。

夜のルーティン その3

好きな本を選んで寝室に持ち込み、眠るまでの読書タイム

夜眠る前には、リビングにある本棚から、2〜3冊本を選んで寝室に向かうのも、磯さんのルーティン。ベッドの中での読書には、続きのある物語を選んでしまうと、先が気になって眠れなくなってしまうので、そういった本は選ばないようにしているとか。眠くなったら途中で本を閉じられるような、エッセイや詩集などを寝室に持ち込みます。

「本の選び方は、その日の気分で。ちょっと疲れたな…というときには、癒される内容のものにしたり、一度読んだことがあってストーリーを知っている本を選ぶなど、工夫しています」

さらに、22時以降はスマホを“ナイトモード”にして、スマホやパソコンなどのディスプレイはなるべく見ないようにしているそう。そして、早い日には、22時には寝室に入るといいます。

「この仕事をはじめてから知ったのですが、睡眠は質より量なんだそうです。以前は、“質の良い睡眠をしなくちゃ”と思っていたのですが、短時間しか睡眠をとれていないと、頭が働かないことを実感していて…。だから最近は、何よりもまず、睡眠時間を確保することを重視しています。そのために、ヨガやストレッチをしたり、お風呂に浸かったりすることで、交感神経から副交感神経へのスイッチをするようにしています」

ヨガや入浴によってカラダのケアをしたり、香りで気持ちのオンオフを切り替えたり、お掃除をして家の中をリセットしたり…。仕事に子育てにと忙しい毎日でも、次の日に疲れを残さないために、しっかり睡眠時間をとることを何より優先しているという磯さん。そのためにも、交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズにできるような夜のルーティンをとくに大切にされているようです。

コラム My Favorite〜毎日を快適に過ごすために〜

時間帯や、空間によって香りを変えて楽しむ

普段から、暮らしの中に香りを積極的に取り入れているという磯さん。空間ごとに香りを変えているそうで、玄関、寝室、子ども部屋には小さなアロマポットを置いたり、リビングにはそのときの気分に合ったアロマを焚いたりと、ドアを開けるたびにさまざまな香りが楽しめます。

「私はすごく香りに敏感なこともあって、鼻から入る情報だとスイッチを切り替えやすいみたいなんです。それで、昼間の香りと夜の香りを変えることで、オンとオフのスイッチを自然と切り替えています。たとえば、昼間はグレープフルーツやゼラニウムの香りで気分を上げたり、夜のレッスンや眠る前のストレッチをする時間には、リラックスできるラベンダーやベルガモットなどの香りを焚くようにしています」

プロフィール

磯沙緒里/Saori Iso

ヨガ講師、ヨガインストラクター。幼少期よりバレエやマラソンに親しみ、体を使うことに関心を寄せる。学生時代にヨガに出合い、会社員生活のかたわら、国内外でさまざまなヨガを学びインストラクターの道へ。現在は、スタイルに捉われずにヨガを楽しんでもらえるよう、対面のほかオンラインでのレッスンも行う。雑誌やウェブなどのヨガコンテンツ監修のほか、大規模ヨガイベントプロデュースも手がける。

 


 

ライター/内田あり

フリーランスの編集ライター。食・子育て・住宅・インテリア・植物・ガジェットなど多岐にわたるジャンルで、ムックや雑誌、フリーペーパー、WEBコンテンツなどで執筆。夫と大学生・高校生の姉妹と4人暮らし。

(取材日:2024/10/9、 取材地:磯沙緒里さんのご自宅、 編集:盛山円香 撮影:田尻陽子)