五感を使う仕事だからこそ、夜はすべてからシャットアウトする時間を。〜スパイスライフアドバイザー・大平美弥さんのナイトルーティン〜
自分自身のお手入れはもちろん、家族やまわりにいる人たちへのケアも大切にする。そんなコンディションを整えることに長けたプロフェッショナルたちは、一日の疲れや乱れをオフするためにどんな夜のルーティンを取り入れているのでしょうか。今回は、スパイスライフアドバイザーとして活躍する、大平美弥さんにお話を伺いました。
朝散歩やカレー屋さん巡りでネタ集めをし、ブログやSNSで毎日発信
あたたかな陽光が差し込む、眺めのよいリビング・ダイニング。ここは、スパイスライフアドバイザーとして活躍する、大平さんの仕事場兼ご自宅です。昼間はこの場所で、雑誌の撮影やスパイス料理のレッスンを行うほか、コラムの執筆やレシピ開発などアイデア出しを。そして夜に自分だけの時間を迎えると、五感を磨くための“ルーティン”を行います。
大平さんの1日は、小学生の息子さんをバス停まで見送りながら、散歩をすることからはじまります。季節の草花を見つけて写真に撮り、X(旧Twitter)にアップ。その日の気温とともに、これから出かける人の参考になるようにと服装のアドバイスを添えます。散歩をすることで、毎日更新しているブログのネタ探しにもなっているのだとか。
「毎日散歩をしていると、季節が巡っているのを感じるんです。たとえば、花粉症の季節をいち早くキャッチしたら、 “花粉症×スパイス”をテーマにブログで情報発信をできないかな…と考えます」
午前中はブログの執筆や仕事に関する調べ物、撮影の下準備など。さらにランチタイムも、大平さんにとっては仕事の一環なのだとか。月曜日はカレーパン、水曜日と木曜日はスパイスやハーブを使った料理を食べに出かけ、その写真と感想をブログにアップしています。
仕事がひと段落したら、息子さんが帰ってくる17時までに家事を終わらせます。20時までは、親子水入らずの時間。宿題に付き合ったり、その横で料理をしたり、一緒に夕食を食べたり。
「子どもが寝たら、私の夜時間がはじまります。11時半までには寝るようにしているので、自分の時間は1時間半〜2時間程度。でもその限られた時間に、好きなことや気になっていることをするようにしています」
嗅覚を中心に五感をフルに活用する大平さんだからこそ、毎日を快適に、そして自分のこころとカラダをリラックスさせるために実践している、夜のルーティンを3つ紹介してもらいました。
夜のルーティン その1
明日のために、スパイスの調合をする
夜の時間に必ず行うのが、明日の仕事や自分たちの食事のために、スパイスを調合すること。
「作る料理が決まっているときには、それに合うスパイスを調合していきますが、何も決まっていないときは、まずは『どんな国の料理を作ろうかな〜』とイメージ。そして、手持ちのスパイスの中からその国のものを集めてきて、自分の感覚でスパイスの調合をしていき、『この香りだったらスイーツに使おう』とか『これはチキンに合いそう』など、香りの構成から料理を決めていくことも多いですね」
スパイスライフアドバイザーは、嗅覚をフルに活用する職業。そのため、香りに関してはとても敏感だと大平さんは言います。さらに、嗅覚と味覚は、鍛えないとどんどん衰えてしまうので、日頃からいろいろな味を楽しんだり、さまざまな香りを嗅いだりすることを大事にしているそうです。
夜のルーティン その2
スイッチ類をすべて切って、“無”になる時間を作る
テレビやパソコン、エアコンなど、わずかでも音がする家電のスイッチをすべてオフにして、お寺で座禅を組むような感じで、“無”になる時間を作っているという大平さん。
「日々生活していると、何をしていても刺激があるじゃないですか。目で見えて入ってくるもの、耳で聞こえて入ってくるもの、何かを食べたり飲んだりすれば味としても入ってくるし、もちろんニオイもそうです。そういった刺激があると、人間って疲れてしまうと思うんですよね」
そこで大平さんは、いろいろな刺激からシャットアウトする何もしない時間を意識的に作り、まさに、「石」みたいにボーッとしているのだとか。
「意識しないと、“無”にはなれません。パッと時計を見て、『〇分になったらスイッチを全部切ろう』と決めるんです。そして、15分間などでタイマーをセット。“無”の時間がはじまったら、とにかくどこか一点をじーっと見ているだけなのですが、何だかすごく浄化される感じがするんですよね。
そして、この”無”の時間が終わると、自然と『何か香りが欲しいな〜』とか、『じゃあ、ターメリックミルク作ろう!』というような気持ちになるんです」
昼も夜も、嗅覚を中心とした五感をフルに使っている大平さん。だからこそ、五感から受けるすべての刺激からシャットアウトする時間をあえて作ることで、また新しいものを取り入れやすくなると言います。
夜のルーティン その3
眠る前にターメリックミルクを飲む
大平さんが眠る前に毎日飲んでいるのが、ターメリックミルク。日本ではあまり馴染みはありませんが、インドや東南アジアではベーシックな飲み物だそうです。
「日本ではカレーでよく使われるスパイスですが、ターメリックそのものは土臭い香りがして、単独で取るにはクセが強すぎるんです。ただ、このクセの強いターメリックは、抗酸化作用や抗炎症作用、また美肌やアンチエイジングなど、さまざまな効果が期待できるんです」
大平さんは、ターメリックの主な原産国であるインドへ行った際に、現地の方にどうやって取り入れているのかを聞いてみたそう。そこで教えてもらったのが、ターメリックミルク。ミルクパンなど小さな鍋に120ccの牛乳を入れ、温まったら小さじ半量程度のターメリックパウダーを入れて混ぜます。火を止めたら、はちみつをお好みで入れて完成。温めたミルクは安眠を誘うと言われているので、夜の眠る前の飲み物としても最適なのだとか。
「個人的な感想ですが、毎日飲み続けていることで、肌ツヤがよくなった気がします。あと、ターメリックは別名ウコン。お酒を飲む前や、胃腸がちょっと弱っているときなどに飲むのもいいと思いますよ」
香りのあるスパイスを毎日扱う大平さんにとって、自分だけの夜時間を過ごすことは、嗅覚など五感を研ぎ澄ませるための大切な行い。そのために、すべての刺激をシャットアウトする“無”になる時間を作ることで、刺激をいったんゼロにして、そこからまた新たな感覚を取り入れるようにしています。毎日を心地よく過ごすため、スパイスを上手に取り入れながら、自分にとってリラックスできる方法を実践しているようです。
コラム
My Favorite〜毎日を快適に過ごすために〜
暮らしの中でも、好きな香りを楽しむ
毎日、さまざまな香りに囲まれて暮らしている大平さん。夜のリラックスタイムに、好きなお香を焚きながら、本を読んだり、音楽を聴いて過ごしたりするのがお気に入りの時間だそう。そして、お香が終わったら、さっと寝室に行くようにしているとか。
「ある方の著書で、『寝床は考える場所じゃない』という考えに出合ってから、ベッドに入ったら、もうあまり考え事はせずに、さっと眠るようしているんです。たぶん、日中の疲れもありますし、眠る前に飲むターメリックミルクの効果もあって、いい眠りにつけているんじゃないかなと思いますね」
また、大平さんは暮らしの中にも、スパイスを取り入れています。たとえば、スターアニス(八角)は消臭効果があり、消費期限が切れてしまったものを豆皿などにちょこんと置いておくだけでも効果があるのだとか。靴箱など、ニオイが気になる場所に置いておくのもいいそうです。
プロフィール
大平美弥/Miya ohira
スパイスライフアドバイザー、スパイス&ハーブ料理家。体に影響がでるほどの偏食を、スパイスとハーブで乗り越えたことで“食”への興味が芽生え、インド、インドネシア、中国、韓国など各国の料理教室に参加。『Miya Spice Salon』を主宰し、スパイスビューティー協会の代表も務める。スパイスの楽しさを広めるため、講演、テレビ、ラジオ出演、レシピ作成、監修のほか、飲食店とのメニュー開発やコンサルティングなども行う。
公式ホームページ:https://www.miya-ohira.com/
ライター/内田あり
フリーランスの編集ライター。食・子育て・住宅・インテリア・植物・ガジェットなど多岐にわたるジャンルで、ムックや雑誌、フリーペーパー、WEBコンテンツなどで執筆。夫と大学生・高校生の姉妹と4人暮らし。
(2024/2/9、 取材地:大平美弥さんのご自宅、 編集:武田明子 撮影:田尻陽子)