翌朝の清々しさのために、その日の家事は持ち越さない。〜整理収納コンサルタント・本多さおりさんのナイトルーティン〜
自分自身のお手入れはもちろん、家族やまわりにいる人たちへのケアも大切にする。そんなコンディションを整えることに長けたプロフェッショナルたちは、一日の疲れや乱れをオフするためにどんな夜のルーティンを取り入れているのでしょうか。今回は、整理収納コンサルタントとして活躍する、本多さおりさんにお話を伺いました。
動線を回廊型にしたことで、朝の支度や家事がラクになった!
家の中をラクに片付けでき、キレイな状態をキープするにはどうしたいいのか。本多さんの頭の中には、その仕組みづくりのアイデアが詰まっています。幼い頃から掃除が好きだった本多さんは、結婚後に暮らしていた団地やアパートでの生活の中で、どんな家事動線が無駄なく使いやすいのか、どんな収納にすればサッと片付けしやすいのかといったノウハウを蓄積。それらのアイデアは、書籍やメディアで紹介されているほか、個人宅へ出向いての整理収納サービスや、オンライン相談の際にも活かされています。
本多さんが暮らしの中で、またコンサルタントとしての仕事で得てきたノウハウをひとつの形にしたのが、中古マンションをフルリノベーションして完成した現在のお住まい。65㎡ほどの物件ですが、すべての壁を取り除いてワンルームにしたことで、リビングダイニングは驚くほどの開放感が得られます。
ワンルームという斬新な間取りを採用した家は、中央にお風呂やウォークインクローゼットなど箱型のものを集めて配置。それを居住スペースがぐるりと囲むような、回廊型になっています。玄関を起点に右回りに進むと、洗面スペースで手洗いをし、洗濯物を洗濯機に入れ、そのままキッチン、ダイニング、リビングと続き、夜には寝室として仕切ることができるスペースを最後に、家をぐるりと一周できます。また、ワンルームにしたことで、窓から入る陽光が家の奥まで届き、家族がのびのびと暮らすことができる家が実現できました。
6歳と4歳の兄弟のママである本多さんの朝は、家事動線に沿ってスタート。起きたら洗面所で顔を洗って、そのまま隣の洗濯機、キッチンへと家事をしながら動いていきます。
「朝は子どもたちの支度などでとにかく忙しいので、できるだけ無駄がないように動いています。この家で理想的な動線がつくれたことで、以前よりラクに家事ができるようになっていますね。また、夫と何度も話し合いを重ね、家事や子どもの保育園の送迎を分担することで、午前中も早く仕事に取りかかれるようになりました」
お子さんが成長して小学生になったことで、家族の出かける時間が一気に早くなり、午前中の仕事は9時にはスタート。基本は窓からの眺望が楽しめるダイニングが仕事場ですが、集中するためにカフェへ行くなどして仕事をこなしています。そして、夕方になると、お子さんたちを学童や保育園へ迎えに行くので、その日の仕事は終了。本多家の賑やかな時間がはじまります。そこから眠りにつくまでに取り入れている、ルーティンを紹介してもらいました。
夜のルーティン その1
洗濯物は夜のうちに洗って乾燥&部屋干し
夕食前には、上のお子さんの宿題を見たり、翌日の学校の準備を手伝ったり、夏ならベランダで水遊びをしたり。忙しくもお子さんたちと過ごす貴重な夜の時間。入浴や夕食をすませている間に洗濯機を回してしまうのが、本多家の定番ルーティンです。
本多さんのモットーは、“汚れたものはその日のうちに洗う”。以前住んでいた集合住宅で、お子さんのいる共働きのご夫婦が夜に洗濯物を干しているのを見て、「そっか、夜に干してもいいんだ」と以前から思っていたそう。やがて、本多さんにもお子さんが生まれ、夜のうちに洗濯物を干してみたら、朝の家事がひとつ減ってとても快適だったと言います。
「動線が回廊型になっているので、“ついで家事”がとてもしやすいんです。夜お風呂に入ったついでに洗濯物を回しておき、朝起きて洗面所で顔を洗うついでに、乾燥まで終わった洗濯物を取り出します。そして洗濯物は朝のうちに畳んで、そのままウォークインクローゼットへ。夕方になると洗濯物の山が……なんてこともありません」
本多さんによると、洗濯機のある場所によって、洗濯家事のしやすさは大きく変わるのだそう。キッチンから遠かったり階が違ったりすると、つい後回しにしてしまいがちになります。その点、本多さんのお宅では、洗濯機を洗面所とキッチンの間に配置したことで、より洗濯がしやすくなっています。
夜のルーティン その2
1日がんばったご褒美は、冷たいビールと動画鑑賞
本多さんが1日の終わりに楽しみにしているのが、キンキンに冷えたビール。早いときには、ビールを片手に夕食を作ることもあります。お酒を飲むことは、がんばった自分へのご褒美なのだそう。
朝と同じように、夜の家事も仕事から帰ってきたご主人と分担。どちらかが食器を洗っているうちに、どちらかが家族分の布団を敷いておくなど、その日その日で臨機応変に動きます。それがバランスよく家事を分担し、お互いが気持ちよく過ごすためのコツのようです。
「最近は子どもたちも学校などで忙しくて、コミュニケーションを取る時間が減ってきてしまって。唯一、ゆっくりと親子で触れ合うことができるのが、家族4人で川の字に並べて敷く、お布団の上なんです。私も子どもたちとゴロゴロしながら、21時ごろ一緒に寝てしまうことも多いですね(笑)」
それでも、たまには夜のひとり時間を楽しむことも。体力にも時間にも余裕があるときには、YouTubeの音ゲートレーニングでエクササイズをしたり、プロジェクターで動画鑑賞をしているそうです。
「心身ともに疲れているときは、子どもたちと一緒に積極的に寝るようにしています。でも、心が疲れていると感じたときには、子どもの就寝後に、自分のために好きな動画を鑑賞しています。“今日は〇〇を観るぞ!”と決めたら、それを楽しみに夜の家事もがんばれるんですよね」
お風呂はお子さんと一緒に入ることが多いという本多さんは、自分のスキンケアに手間も時間もあまりかけられません。そこで、洗面所とは別に、小さな鏡とスキンケアグッズを置いた専用スペースを設置。化粧水などはすべてポンプ式のボトルに移し替え、それを持ち手付きのカゴにまとめておくと、いちいちボトルを取り出して使う手間が省け、何よりボトル類などが散らかりません。
「必要であれば、カゴごと持ち運びができるので、このアイデアはすごく便利ですよ。ボトルに詰め替えることで、子どもも簡単にプッシュして使えるのでおすすめです」
夜のルーティン その3
テーブルや床の上は、物がない状態で眠る
寝る前には必ず、テーブルと床の上などの「面」に落ちているモノは、すべて片付けることをマイルールにしている本多さん。お子さんが起きていれば、「一緒に片付けようか」と、できるだけ巻き込んで片付けを行います。例えばコップ類が散らかっていたらシンクに移すだけでいいし、床におもちゃが転がっていたらおもちゃ箱に放り込むだけ。そのちょっとひと手間をするかしないかで、翌朝の気分が大きく違うと言います。
また、お子さんがいるご家庭では、学校からのお手紙などで、どうしても紙類がごちゃごちゃしてしまいます。そこで本多さんが実践しているのが、紙類の一時置き場を設けること。本多さんのおすすめは、A4サイズの紙類がそのまま入る平べったいカゴです。取っておきたい手紙類などを一時的に入れておき、いっぱいになったら要るものと要らないものを見直します。この“見直し”をこまめにすることが大切なのです。
「テーブルの上などに何もない状態で寝ると、朝起きた時の部屋の景色が全然違うんです。窓の外の緑がとても爽やかで、朝から清々しい気持ちになるのですが、モノが置いてあるとそれが先に目に飛び込んできてしまいます。翌朝に自分ががっかりしないように、という気持ちで毎晩片付けていますね」
無駄のない家事動線を上手く活用しながら、忙しいながらも快適な暮らしを実現している本多さん。洗濯物は夜のうちに、眠る前はモノを片付ける、大好きなお酒や動画鑑賞でひとり時間を楽しむなどのルーティンを取り入れることで、家事や育児、さらに仕事へのモチベーションアップにつなげているようです。
コラム
My Favorite〜毎日を快適に過ごすために〜
窓からの景色と家全体が眺められる特等席で
「家の中で好きな場所は、このダイニングテーブル。ここに座って仕事をしていると、部屋をぐるりと見渡せるうえ、窓の外には公園の木々が臨めて、本当に気持ちがいいんです。
でも、家にいると、やるべき家事がいろいろ浮かんでしまって、頭の中を休めることが難しいときも。そこで先日は、ひとりでホテルに1泊ステイを実行。金曜の夜に泊まって、土曜の朝に帰ってくるというしばしの休暇ですが、家のことは何も考えず、ひたすら好きな動画を見て、お酒を飲む。そんな自分だけの時間もたまには大事です」
プロフィール
本多さおり/Saori Honda
生活重視ラク優先の整理収納コンサルタント。収納で大事にしているのは、楽に片付いて家事がしやすい仕組みづくり。その考え方を重視し、誰でも自分の生活に落とし込めるような提案をしている。夫、長男(6歳)、次男(4歳)の4人家族で、2020年よりフルリノベーションした中古マンション(変則1ルーム65㎡)に暮らす。
Instagram:https://www.instagram.com/saori_honda/
公式HP: https://hondasaori.com/
ライター/内田あり
フリーランスの編集ライター。食・子育て・住宅・インテリア・植物・ガジェットなど多岐にわたるジャンルで、ムックや雑誌、フリーペーパー、WEBコンテンツなどで執筆。夫と高校生・中学生の姉妹と4人暮らし。
(取材日:2022/06/28、 取材地:本多さおりさんのご自宅、 編集:武田明子 撮影:田尻陽子)